患者相談支援室
看護師 鈴木真弓
私が看護師になろうと思ったのは中学生のときです。大好きだった祖父ががん治療で入院して病院に何度もお見舞いに行きました。そこで私たち家族にも心配りをしてくれて寄り添ってくれた看護師さんの姿にあこがれを感じたのがきっかけでした。高校は看護学科に進学して卒業後は看護専門学校に進みました。新卒の外科配属から始まり、泌尿器外科、脳神経外科、整形外科、内科は呼吸器、消化器といろんな診療科を経験しました。働くなかでもがん患者さんとの接点が多く、祖父のこともあったせいか「もっとがん患者さんと深くかかわりたい」と言う気持ちが大きくなってきました。看護師としてのキャリアは24年が経っていました。ちょうどそのころ患者相談支援室への異動を打診されました。尊敬する先輩もいたのでチャレンジすることにしたのです。
相談件数は年間2400件、広報活動など行い3年間で120%アップ
いざやってみていちばん戸惑ったのは約半分を占める電話による相談です。当病院はがん相談の拠点病院に指定されているので全国からの相談があります。相手は患者さん本人、ご家族や親せきの場合もあり、初めて電話をいただくときは情報収集から始まります。病棟では相手の表情などを見ながら話を聞き出すことができましたが、電話だと声だけが頼り。これには苦労しました。実務としては相談者のお話を聞いて気になる点を掘り下げていきます。内容は①症状や治療に関すること、②セカンドオピニオン、③(患者本人から)家族へ病名や治療法の伝え方、④(家族から)患者への接し方……など多岐にわたります。とくに最近は遺伝疾患の研究も進んでいるので家族への影響についての相談なども増えています。受けた相談を整理して自分たち(がん専門相談員)で対応できるもの、ソーシャルワーカーや臨床心理士など他の専門家と連携することを整理してチームで対応します。チームは現在10名です。多くの人に私たちの活動を知ってもらうためにリーフレットなども作成して図書館に置いてもらうといった広報活動もしています。おかげで3年前には年間2000件を目標としていた相談件数が昨年は2400件まで増えてきています。
コロナ禍で患者さん、家族とのコミュニケーションが減り、スタッフとの間に新しい問題が
相談員として心掛けていることは、患者さんに寄り添い、不安を最小限にして、本人が望むことに対して適切な案内をすること。がん治療は著しいスピードで進化しています。遺伝子レベルの研究も進み“がんゲノム医療(がんの組織を用いて一人ひとりの体質や病状に合わせて行う治療)”が施されることも少なくありません。薬も毎年のように新しいものが開発されています。そういった新しい知識も日々吸収していくこともがん専門相談員には求められます。また、すでに2年に及ぶコロナ禍では家族のお見舞いの機会が制限されています。それにより患者さんと家族のコミュニケーションがとりにくくなっています。医療者が間に入ってコミュニケーションのお手伝いをしますが、どうしても齟齬が生じることがあります。それに対して「いったいどうなっているんだ?」との患者さんや家族からの不満が医療者に向くケースも増えています。こういったすれ違いを整理して解決していくことも私たちの仕事だと思っています。