患者さんの事情をしっかりと理解できる急性期の看護師を育てたい

看護師の仕事の醍醐味を感じた瞬間

私が子どもの頃は女性で仕事をする人は少ない時代でした。しかし、両親に「女性も自立する時代だから、手に職をつけなさい」と勧められ、結果的に看護師になる道を選びました。私が、看護師になりたての頃、この仕事についてよかったと思った瞬間がいくつかあります。
10歳の男の子が交通事故に遭い、左顔面が削がれるほどの重傷で、呼吸器をつけ生死を彷徨っていました。しかし、回復し、歩行できる様子を見るにつけ医療や看護の力の凄さをまざまざと見せつけられました。
がん患者の生存率が良くない時代、また告知をしていない時代でした。今でも、がんを患った患者さんは暗い気持ちになりますが、前向きに病と闘う患者さんがいました。その患者さんを看ることで、私の方が勇気づけられました。それからの私は、患者さんと一緒に闘う気持ちで看護をするようになり、この仕事にとてもやりがいを感じるようになりました。
喉頭がんの患者さんの大動脈が破裂し、大出血された時です。入院していた子どもが走って来て、このことを教えてくれました。その出血の多さにも驚きましたが、結果、救命できました。みんなで助け合うことの大切さを学んだ瞬間でした。
自分ひとりで仕事をしているのではない、一緒に仕事をしている仲間、自分が担当している患者さん、自分が担当していない患者さんと共に自分が活かされていることに感謝しながらできるこの仕事は素晴らしいと思っています。

単に知識を得るだけでなく、根拠を理解することがこだわり

私は、看護師になって数十年が経ちますが、看護をする上でのこだわりがいくつかあります。
 1つ目は、病気を知らないといけないということです。疾患に関する本を読み、医師に聞き、看護の教科書を見ればすぐにわかるようになるくらい勉強することにこだわっています。例えば、外科で言えば、解剖学的にドレーンはどこに入るのか、なぜ入るのか、先生の考えはどうか、患者さんの反応はどうかということをしっかりと勉強します。そのことで、自分で判断ができるようになります。
 二つ目は、患者さんのために医師を動かすくらいにならなければならないということです。今は違いますが、振り返れば、威張っている医師もいましたし、話をしてくれない、聞いてくれない医師もいました。しかし、患者さんにより良い医療や看護を提供するためには、時には医師を動かしていく必要があります。そのためには「根拠」を示して説明することが大切になってきます。「思います」という曖昧な主張ではなく、納得性の高い意見を述べるためにも「根拠」を示すことを意識してきました。今は、医師とカンファレンスをする時代です。益々、そういうことが大切になってきました。
 三つめは、患者さんと共に闘うということです。患者さんの抱える事情や想いをしっかりと理解し、病に対して一緒に闘う看護にこだわりを持っています。

疾患だけでなく、生活背景も含めて考える看護師を育てたい

 今年の4月に看護部長になりました。これからの私のビジョンは、急性期の看護ができる人を育成していきたいと思います。その第一条件は、患者さんが入院し、診察を受け、治療をしてくプロセスにしっかりとついていける看護師になってもらうことは言うまでもありません。そのためには、先ほども挙げましたが、自ら疾患についてしっかり勉強してほしいと思います。そして、次に患者さんやご家族とコミュニケーションが取れる人です。疾患についてだけでなく、生活背景、例えば、家族構成だったり、普段の生活、興味・関心のあることについても理解をし、その人その人の事情に適した看護ができるような関係性を作っていってほしいと思います。自分を理解してくれる存在になろうという意識が良い看護に繋がると思うので、そういうことを職場でも大切にしていきたいと思います。